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第66回:「法人青色」について

2018年7月28日

今回の税務トピックは、前回の個人の青色申告に続き、法人の青色申告についてご紹介いたします。

法人の場合も個人の場合と同じく、青色申告によって大きくメリットを受けることができます。

今回はそのメリットに焦点を合わせ、簡単にこの制度についてご説明いたします。

●対象となる法人

まず、期限までに青色申告の承認申請書を提出し、その承認を受けた法人がこの制度によるメリットを受けることができます。

期限は適用を受けたい年の前事業年度終了の日までで、新設法人の場合は設立から3ヶ月以内もしくはその事業年度終了の日のいずれか早い日となります。

新設法人やこれまで期限内に適切な申告や帳簿の作成を行っている法人であれば、基本的には申請は通ります。

●受けられるメリット

次にこの青色申告によって受けることのできるメリットをご説明します。

  1. 欠損金の繰越控除
    おそらくこれが法人における青色申告による最大のメリットとも言えるでしょう。

    これはその年に生じた欠損金(赤字の金額)を最大で9年間繰り越すことができる制度のことです。
    中小法人であればそれ以降の年に生じた所得金額から全額(中小法人以外の場合は55%※H30年度決算の場合)を引くことができ、業績が悪く赤字になってしまった年と業績が良く利益が多く出てしまった年の税負担を均す効果があります。
    なお、中小法人に関しては赤字になった年に前年に納付した税金の還付を受ける、繰戻し還付という制度もあります。

  2. 少額減価少額資産の特例
    こちらは中小企業者のみの制度ではありますが、通常資産計上が必要な10万円超の備品や機械の購入を1資産あたり30万円まで費用として処理できます。(ただし合計額が年間300万までが限度となります。)

    償却資産税の対象にはなってしまいますが、そこまで高額の機械や備品を置かないオフィスワーク中心の中小企業であれば、PCやデスクといった備品関係の多くは費用として処理できるのは大きなメリットです。

  3. 特別償却・税額控除
    法人税法においては政策的な理由などから、設備投資や先端技術の開発、賃金のアップなどに積極的な法人に対して、取得した資産の全額ないしは一部を大きく費用に落とせる『特別償却』や税額の一部を控除する『税額控除』といった制度があります。

    これらの特別償却や税額控除は、青色申告法人であることが条件になりますので、こちらも青色申告のメリットの一つと言えます。
    特に賃金アップした場合に受けられる『所得拡大促進税制』は適用を受けやすく、かつ中小法人は最大で法人税額の20%を控除できるため、特にそのメリットは大きいです。

    以上が法人における青色申告のメリットとなります。
    これまでデメリットについては特に触れていませんが、それは特にこれと言ったデメリットがないからです。
    無理に挙げるとすれば、法律で定められた帳簿書類の作成・保存や期限内での申告が必要であるため、白色申告に比べると事務負担が大きいと言えなくはありません。

    しかし期限後の申告納付に延滞税などのペナルティがあることには変わりありませんし、適切な帳簿の作成は、銀行からの融資や自社の経営状況の把握に必須となるため、この制度に関わりなく必要なことではあります。

    基本的にはほとんどの会社が青色申告による確定申告を行っており、上記のメリットを意識されている方は少ないかと思います。

    しかし設立時に提出が遅れてしまったり、二期続けて期限後申告になって取り消されたりすると白色での申告になってしまい、その時に初めて青色申告の大切さを知ることになりますので、くれぐれも取り消されないようにご注意ください。